もともと、無印良品が出版社になって本を刊行する第一弾企画として、このプロジェクトは始まりました。企画段階から良品計画が特別にこだわっていた「定価500円」の壁にいくども阻まれながらも、「一人一冊」という編集方針が定まってからは、編集部の体制から本の仕様まで、つぎつぎ決まりました。こうして、著者名がすなわち書名になる、というアンソロジー形式の出版企画がはじまり、3行コピーの帯巻きや、ダストカバーをつけないシンプルな装丁など、佇まいもMUJIらしく簡素でひかえめに仕上がっていきました。
シリーズ共通で、巻頭には8点の「くらしの形見」をカラーで収録します。柳宗悦の名刺、花森安治の目覚まし時計、小津安二郎の表札、茨木のり子の椅子、などの大事にされてきた愛用品は、一見本業とつながりがないように見えて、どんな言葉よりも、その人となりを雄弁にものがたります。