2020年2月、鹿児島の障がい者福祉施設「しょうぶ学園」を訪問しました。きっかけは、デザイナーの勝屋まゆみさんから届いた一通のDMハガキ。しょうぶ学園施設内にあるSギャラリーで、勝屋さんと工房しょうぶのバッグ展示会が行われるという報せでした。
その頃はちょうど、しょうぶ学園の施設長・福森伸さんの著書『ありのままがあるところ』(晶文社)を読んでいたタイミングでした。ふしぎなご縁に導かれるように、ハガキの届いたその日のうちに、鹿児島行きの航空券を予約したのでした。
当日は、施設内のパスタ&カフェ「Otafuku」でランチとお茶を堪能。それから、「工房しょうぶ」や「nui Project」といった施設の様子をじっくり見て回ることができました。Sギャラリーには、勝屋さんがデザインしたバッグ生地に施設利用者の方々が思い思いのペイントや刺繍をほどこした奇跡のようなコラボレーション作品がズラリ。施設見学の最後には、施設長の福森伸さんとデザイン室の福森創さんとの愉快な雑談タイムも。突然の訪問にも関わらず、あたたかく迎えてくれました。
しょうぶ学園が発信するものは、紙メディアやプロダクト、施設内の空間サインなど、あらゆる場面に利用者による手書き文字やイラストが上手に生かされています。アウトサイダーアートやアール・ブリュットを地でいくこのスタイルは、鮮烈な印象でした。
この出会いがご縁となり、現在準備中の新しい書物空間プロジェクトの「書棚サイン見出し」を、しょうぶ学園さんと一緒に制作しています。
わたしたちは、一人ひとり違う。「違う」ということだけが、みんな同じ。「あたりまえ」のことを問い直したり、自分の「らしさ」を掘り起こしたり、そんな時間をもっと増やせたら、社会はどんなカタチに見えるのか。考えてみたりしています。
乙部恵磨(EDITHON)