イベント当日の2020年8月28日は、COVID-19が感染拡大している禍中も禍中。東京オリンピックの開催を延期せざるをえないほど、社会も文化も自粛ムードに取り巻かれていました。それでも「ただのオンライン講演なんかやるつもりはない」という松岡さんのおもいというか反骨に応えるべく、基本はオンライン配信としながら、最小人数のゲストを招き入れる会場づくりに。
編集工学研究所からドサっと運びこまれた千夜千冊の蔵書に加え、エジソンからは杉浦さんが造本した『印』(カイヨワ+森田子龍)やマルセル・デュシャンの『Museum in a Box』など、特別な造本による「千夜千冊の副読本」もいくつか持ち込み、できるだけ固めず、でもバラバラもさせず、松岡さんらしく粗密感のある本の景色を右に左に、前にうしろに、組み上げました。結果、片付いていないオタクの部屋っぽくもありますが、本の並びは「千夜千冊」の公開順ではなく、WEB上を飛び交うハイパーリンクのごとく、3冊から5冊くらいの単位で組み合わせをこしらえ、配置しました。仕上げに、急逝した藤本晴美さんをこの場で感じたくて、私物のインゴ・マウラーやヨーガンレールの照明具を照らし、本の気配をトワイライトに染めました。
[写真]後藤由加里、寺平賢司