北京の小さな独立系出版レーベル「読庫(どくこ)」は、中国で最も美しい本を作る出版社です。「読庫」と出会ったのは2015年の秋。「無印良品 上海755旗艦店」の開店に向けて、中国大陸ではじめてのMUJI BOOKSにふさわしい上質な本を探していた時のことです。ウルムチ、武漢、上海、北京など中国各地の出版社や編集部をめぐって、たどり着いたのが「読庫」でした。
「読庫ノートブック(DUKU NOTEBOOK)」は、数多くの書籍を手掛ける「読庫」が刊行する上製本のノートブックです。60冊を超えるラインナップは、いずれも空白ページと図像ページをランダムに配置するユニークな装丁。内容に合わせて表紙にタイトルを刻印するなど、さながらハードカバーの書物のような佇まいです。エジソンは、2016年以降、日本で「読庫ノートブック」を販売する代理店を担っています。
毎年5冊ずつ新作が発表されます。人気があるのは、ロバート・キャパ、アンリ・カルティエ=ブレッソンらが創設した写真家集団「マグナム・フォト」所蔵の膨大なフォトアーカイブから「キスの写真」だけを選び抜いた『吻』、北京の「胡同《フートン》」のイラストを綴じ込めた『胡同』、中国の著名な建築家である梁思成(Liang Sicheng)による「図像中国建築史」の原画を収めた『梁·古建制图』など。
中国の独立系出版社として、2006年に産声をあげた読庫。編集長兼代表の張立憲(Zhang Lixian)は、もともと中国で人気の「サッカーの夜」や、「生活情報」などの雑誌創刊にたずさわり、「現代出版社」の副編集長も担った骨太な編集者です。2008年には「思想が中国を推進する――Lenovo ThinkPad中国思想力人物大賞」で、受賞者10名の内の1人に選ばれています。
ノートブック以外の看板商品は、出版レーベル名を冠した雑誌「読庫」です。人文と社会科学を総合案内する内容で、社会・文化・事件から文芸・映画・音楽まで、多領域に及ぶテーマを時間をかけて丁寧に取材をします。隔月刊行で、各号およそ5万部を刊行しています。
2016年には、翻訳児童書のシリーズ「読小庫」を立ち上げ、それまで中国では手に入らなかった上質な海外の絵本を、積極的に中国で紹介しています。その数およそ年間50冊。中国の子どもたちに世界水準のホンモノの本を届けたい、という意欲は半端ではありません。読小庫の絵本で育った子どもが大人になったとき、紙の本の手触りやその感動を思い出してほしい。そんな願いを込めて、読庫編集部は今日もデスクに向かっています。
読庫の出版社としての姿勢にも深く共感し、中国でも一部地域でしか手に入らないこの美しいノートブックの輸入販売をはじめました。2016年から、無印良品のMUJI BOOKSでも販売を開始しました。現在は、東京を皮切りに、香港、パリ、メルボルンでも販売しています。